こどもの病気

赤文字は当院で行っている検査・治療です。

赤ちゃんの耳垢

生まれたばかりの赤ちゃんは外耳道が狭く、黄色から茶色の分泌物が見られ、においがしたり耳だれと間違うことがあります。これは胎脂(出生時に体に付くクリーム状の脂質)と耳垢の混合物です。耳垢は虫や細菌から外耳道皮膚を守る働きがあります。無理に取り除こうとすると耳の奥に押し込んだり、鼓膜を傷つけてしまいます。耳垢の掃除は見える部分をベビーローションなどで湿らせた綿棒で行ってください。掃除が困難なら無理をせずに耳鼻咽喉科に相談ください。

小児反復性中耳炎

過去6ヶ月以内に3回以上、12ヶ月以内に4回以上急性中耳炎に罹った場合を言います。

危険因子としては、①生後6ヶ月から2歳まで低年齢(母からの免疫が徐々に消失し、自分の免疫がまだ未熟なため)、②集団保育(カゼに罹る機会が増えるため)、③母乳栄養期間の短縮(母乳に含まれる免疫抗体の補充不足)、④耐性菌の増加、などです。

[治療]

抗生物質を使用します。難治性の場合は点滴で投与する場合もあります。また外科的に鼓膜切開を行い貯留液を吸引したり、鼓膜切開の穴が閉じるとすぐに中耳炎になるようなら切開した穴に閉じないようにプラスティックのチューブを留置します(鼓膜チューブ留置術)。チューブは平均3ヶ月で自然脱落する例が多いですが、2歳を超えると中耳炎になりにくくなるため、2歳以降は必要なくなる場合が多いです。

滲出性中耳炎

小児から高齢者まであらゆる年齢で発症します。

原因はカゼが誘引になったり、耳管機能の問題、口蓋裂やアデノイド肥大、上咽頭の腫瘍で起きる場合もあります。
放置すると癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎になり、聴力が低下し、手術が必要になります。

[検査]

鼓膜を見て中耳炎を確認します。またレントゲンファイバーで上咽頭を確認します。聴力検査で聴力を確認したり、ティンパノメトリーで鼓膜の動きをチェックします。

[治療]

経過観察や鼻処置ネブライザー通気治療(小児の場合はポリッツェル球を使います)、抗生物質や消炎剤、粘液溶解剤、抗アレルギー剤などの投薬治療を行います。

投薬治療でも治癒困難や中耳炎反復するようであれば、鼓膜切開術鼓膜チューブ留置術を行います。

アデノイドが大きい場合は手術で切除します。上咽頭に腫瘍がある場合は腫瘍に対する治療が必要です。

[予防]

鼻すすりをやめて、鼻水があれば鼻をかんでください。子供の場合、自覚症状の訴えがないため、鼻症状がある時は耳のチェックのために耳鼻咽喉科に相談ください。

小児鼻炎

鼻炎の原因としては、カゼによる急性鼻炎やアレルギーによるアレルギー性鼻炎が多いです。

症状としては、鼻水やくしゃみがひどい、鼻づまりで眠れない、集中力が落ちる、頭痛が続く、口臭がある、中耳炎になりやすい、鼻水がのどに流れ咳や痰が続く、などです。

急性鼻炎の場合はウイルスや細菌感染で起きます。検査として血液検査細菌培養検査を行います。アレルギー性鼻炎の場合は、ハウスダスト、ダニ、花粉、ペット、カビ、ホルマリン、温度変化で起きます。

[検査]

血液検査でアレルギーの原因検索(イムノキャップラピッド)や鼻水の好酸球を調べます(鼻汁好酸球検査)。副鼻腔炎合併した場合は顔面レントゲンをとります。

[治療]

原因になるものを取り除くことが大切です。風邪の場合は鼻をかんでウイルスや細菌を減らしたり、アレルギーの場合は原因を取り除いてください。またマスクなどで加湿をすると風邪の治るのも早く、アレルギー症状も軽くなります。耳鼻科では内服薬や点鼻薬を使います。アレルギーは治療していると症状改善しますが、治療を中断すると悪化することもあります。また鼻水の吸引やネブライザーも効果あります。

扁桃肥大

扁桃肥大は生理的肥大と病的肥大があります。生理的肥大では4-5歳より肥大し、7-8歳で最大となりますが、12-13歳から縮小し始め、思春期を過ぎると退化・萎縮します。病的肥大は反復感染による慢性炎症や腫瘍により大きくなることです。

扁桃肥大があっても症状がない場合もあります。症状として多いものは、いびきや睡眠時無呼吸症候群、炎症が加われば発熱や咽頭痛です。小児では夜尿症や夜驚症、陥没呼吸や胸郭の発育異常、顔面骨形成の障害をもたらすことがあります。

[検査]

主には視診による評価ですが、炎症を認める時は血液検査を行い、腫瘍を疑う時は組織を採取して精査します(病理組織検査)。いびきや睡眠時無呼吸症候群がみられる場合は夜間のモニター検査も行います。

[治療]

生理的肥大で症状がなければ経過をみます。炎症を認めれば消炎治療を行い、腫瘍であれば組織に合わせた治療を行います。症状が強いようであれば扁桃摘出術を行います。

溶連菌感染症

溶連菌はのどの炎症の原因となる菌です。症状は咽頭痛や発熱が多いです。なかには扁桃炎から腎炎や体・手足の皮膚に小さくて紅い発疹がでる方もいます。

[検査]

イチゴ舌などの特徴的な所見を確認します。ファイバーなどでものどの観察を行ったり、咽頭のぬぐい液を検査(ストレップA検査キット)に出して確認したり、血液検査で炎症の値を調べます。

[治療]

抗生物質を投与したり、解熱鎮痛剤を使用します。内服が困難な場合は点滴や坐薬を使います。抗生物質は1-2週間投与が必要になる方が多いです。

扁桃炎は反復する方が多いです。1年に3-4回繰り返すようであれば扁桃を手術で摘出することを考えた方がよいです。

アデノウイルス感染症

扁桃やリンパ節に潜伏し、増殖して悪さをするウイルスです。夏カゼであるプール熱を発生させるウイルスとしても知られています。主に子供が感染するウイルスで、38-40℃近い熱・鼻水・のどの痛み・結膜炎などの症状を起こします。潜伏期間(感染してから症状がでるまでの期間)は5-7日間です。

[検査]

咽頭炎、結膜炎、発熱といった症状と咽頭ぬぐい液からウイルスを検出する(アデノウイルス検査キット)ことで診断します。

[治療]

ウイルス自体を治す薬はありません。対処的に解熱鎮痛剤を使い、治癒を待ちます。あとは水分や栄養を摂り、安静にしてください。

熱は4-5日続く可能性があります。唾液からの感染を起こしますので、感染後は人ごみを避けたり、集団生活をされるお子様は熱が下がるまでは、登園・登校は控えてください。

ヘルパンギーナ

夏に感染するコクサッキー・エンテロウイルスが原因で、主に子供が感染します。38℃以上の発熱、咽頭痛から始まり、症状は2-4日続きます。潜伏期間(感染してから症状がでるまでの期間)は2-5日間です。ウイルスが完全に抜けるのには数週間かかります。口腔所見は口蓋垂周囲に小水疱がみられます。

治療はウイルス自体を治す薬はありません。対処的に解熱鎮痛剤を使い、治癒を待ちます。あとは水分や栄養を摂り、安静にしてください。発熱、頭痛、嘔吐などの症状がある場合は髄膜炎の可能性がありますので早めに相談ください。

唾液からの感染を起こしますので、うがいをしたり、感染後は人ごみを避けたり、集団生活をされるお子様は症状が改善するまでは、登園・登校は控えてください。

耳下腺炎

小児期の耳下腺炎には、①流行性耳下腺炎、②反復性耳下腺炎があります。

①流行性耳下腺炎

「おたふくかぜ」と呼ばれ、ムンプスウイルスが感染して起きます。ムンプスウイルスは約2週間の潜伏期間があります。

症状は発熱、唾液腺の腫脹(最初は片側が腫れ、次第に両側が腫れてくる場合が多いです)、髄膜炎(頭痛や嘔吐が出現します)、膵炎(おなかの痛みが出てきます)、睾丸炎(20-30%の頻度で睾丸の腫れを認め、無精子症になります)、聴力障害(1-2万人に1人の頻度で片耳が聾になります)などがあります。

問診が重要で、罹患歴があるか、ここ2週間で患者と接触したか、を確認します。血液検査で血清アミラーゼの上昇を確認しますが、確定診断はムンプスウイルスIgMの上昇です。

治療は解熱鎮痛剤の使用や安静を保つことです。3-4日で解熱し、唾液腺腫脹も1週間前後で改善します。

小児の場合は学校保健法で第二種の学校伝染病に分類されており、唾液腺腫脹が消えるまでは登校禁止です。

②反復性耳下腺炎

口腔内の常在菌が唾液が出てくる管を逆行性に感染する病気です。やや男児に多く、ほとんどが6歳以下で初発します。思春期以降に自然に消退することが多いです。

症状は痛みを伴う耳下腺の腫脹を反復することです。高熱を伴うことは少なく、腫脹は数日で消退します。

耳下腺の腫脹はありますが、顎下腺の腫脹はなく、耳下腺管の開口部より膿汁を認めることがあります。血液検査では血清アミラーゼの上昇や炎症反応も認めます。超音波検査を行うと耳下腺の腫大と耳下腺内の管の拡張を認めます。

治療は、口腔内の清潔と抗生物質を使用します。

再発予防のためには、口腔内を清潔に保ち、唾液の流出を促進します(梅干しなどの酸味を取り入れる)。

ことばの遅れ

ことばの遅れの原因として、聴力の問題や精神発達遅滞などの発達障害などがあります。1歳4か月で単語が1つも出ない場合、2歳で2語文が出ない場合は言語発達が遅れている可能性がありますが、個人差もあります。

検査としては、まずは問診で難聴の家族歴、妊娠中の病気の有無、出産後の髄膜炎などの感染症の既往を確認します。その後、耳垢や中耳炎の有無など耳内をチェックし、聴力の評価を行います(聴力検査)。知能・発達の検査で発達の遅れの有無を確認します。

言語発達障害が確定したら、難聴が原因の場合は補聴器や人工内耳などで聴力を補いながら言語訓練を行っていきます。発達障害がある場合は療育施設に相談し社会適合のサポートが必要になります。