みみの病気

赤文字は当院で行っている検査・治療です。

急性中耳炎

カゼに伴い、耳管から中耳に感染が波及して発症します。生後6ヶ月から2歳の乳幼児に好発します。

症状は耳の痛み、耳だれ、発熱、難聴、耳の詰まった感じなどです。乳児の場合は自分で症状を表現できないため機嫌が悪い、熱が出る、泣く、耳を触るなどが見られます。

原因菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ.カタラーリスが多いです。最近は耐性菌が増えてきています。

[検査]

鼓膜所見で中耳粘膜発赤、中耳腔への膿の貯留を確認します。聞こえが悪い時は聴力検査ティンパノメトリー(鼓膜の動きをみる検査)も行います。菌の同定のために耳ろうや鼻水を採取して検査(細菌検査)に出します。

[治療]

抗生物質の投与を行います。最近は耐性菌が増えており、内服薬でなかなか治癒が困難な患者が増えています。その場合は抗生物質の増量や点滴も考慮します。また鼻汁が多いと治癒の遅れにつながるため粘液溶解剤や鼻汁の吸引、吸入が必要になります。家庭でできることは鼻をかんで鼻水を取り除くことですが、もしまだ鼻がかめない子供の場合は鼻吸い器で吸引してあげてください。

外科的処置として鼓膜切開術があります。鼓膜に小さい穴を開けて中耳腔内の膿を吸いとります。鼓膜の穴は数日で閉じることが多いですが、耳だれ続く間は耳の処置が必要です。

慢性中耳炎

中耳炎を反復し、鼓膜に穴ができたり、中耳腔の粘膜肥厚や耳だれを認めます。

[検査]

鼓膜を確認し、聴力検査を行います。治療しても耳だれが止まらない場合は細菌検査を行います。

[治療]

保存的治療で耳だれの停止をはかります。保存的治療は耳を洗浄したり、抗生物質の内服や点耳を行います。それでも鼓膜の穴がふさがらない場合や耳だれを反復する場合、聴力が悪い場合は手術も考慮します。

手術は、①鼓膜穿孔閉鎖術、②鼓膜形成術があります。まずは鼓膜に人工の薄い膜を置き(中耳機能検査)、聴力が良くなるかを確認します。

突発性難聴

突発性難聴は内耳障害で起きる病気ですが、原因はまだ不明でストレスや寝不足が引き金になることが多いです。糖尿病、高血圧、高脂血症などをもっている方に多いです。聴力低下が高度であるとめまいも伴うことがあります。

[検査]

鼓膜をチェックし、聴力検査を行います。めまいがある場合はめまい検査を行ったり、聴神経腫瘍(聞こえの神経にできる良性腫瘍)が疑われる場合はMRIで頭部を精査します。

[治療]

薬の治療が主体となりますが、発症して2週間過ぎての治療は効果が得られない場合があります。薬はステロイド(内服もしくは点滴)を使いますが、糖尿病や高血圧のある方は症状が悪化する場合があり、それ以外にも胃腸障害や睡眠障害もあります。それ以外にも血管拡張剤、ビタミンB12、代謝改善剤を使います。それ以外にも高圧酸素療法(酸素濃度の高いタンクに入って血流を改善させます)やステロイドの鼓室内注入療法もあります。

安静やストレス解消も必要です。十分休養をとってください。

<院長コメント>

突発性難聴は発症してから早期に治療することが大事です。急に聞こえがわるくなったり、耳鳴や耳閉といった症状があれば早めに御相談ください。

メニエール病

内耳の病気でリンパ液の滞りで起きる病気です。回転性めまいを伴う聴覚異常(聴力低下や耳鳴など)の発作を繰り返します。几帳面で神経質な人に多く、ストレスや寝不足、気圧変動時に起きることが多いです。

[検査]

フレンツェル眼鏡で眼振(黒まなこの動き)を確認します。発作時には病気側に向いた眼振を認め、数十分から数時間で健側に眼振が変化します。聴力検査では病気側の低音域の低下を認めます。眼振あるうちは嘔気も出現します。

[治療]

発作期は動くことが困難で嘔気も強いため安静を保ちながら、嘔気に対して制吐剤、メイロン、ATP、抗不安剤を投与します。ステロイドも投与する場合が多いです。回復期にはいるとめまいの内服薬やイソバイドといった利尿剤を使用します。

生活指導としては、ストレスや睡眠不足、過労を避けて、塩分・コーヒー・タバコ・アルコールの摂りすぎに注意が必要です。

難治例で生活に支障がでる場合は手術を行う事があります。その時には専門病院を紹介します。

耳鳴について

耳鳴は「キーン」という高音や「ジー」といったセミの鳴き声などいろいろです。

[原因]

突発性難聴やメニエール病などに付随して起きるものや動脈硬化や聴神経腫瘍などの腫瘍によって起きるものもあります。また、耳管機能障害や筋肉の痙攣で起きるものもあります。

耳鳴の患者の80-90%に難聴を認めると言われています。

[検査]

聴力検査で聞こえを調べます。耳管機能障害が疑われる場合はティンパノメトリーという鼓膜の動きをみる検査も追加します。腫瘍が疑われる場合は頭部CTやMRIも撮影します。

[治療]

突発性難聴やメニエール病であればステロイドを加えた治療を行います。腫瘍が見つかった場合は腫瘍の治療を行います。標準的治療は、ビタミン剤(ビタミンB12が中心でビタミンCやEを加えることもあります)、ATP(エネルギーのもとになる薬)を使いますが、効果なければ漢方薬を使ったり、耳鳴による不安や不眠あれば抗不安薬や睡眠導入剤も併用します。キシロカイン静注が有効な場合もあります。補聴器のような器械を耳につけて耳鳴りをかき消す治療(TRT)もあります。

[予後]

耳鳴りはまだ機序が不明なため上記の治療が必ず効果があるとは限りません。いろいろ治療を組み合わせ、根気よく治療していく必要があります。

めまい

めまいの原因はいろいろあります。

①耳の病気(メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎など)、②頸部の病気(肩こり、頸椎症からくる頸性めまいなど)、③脳の病気(脳梗塞などの脳血管障害、脳腫瘍)、④自律神経の病気(起立性低血圧など)、⑤その他(貧血、高血圧、糖尿病、不整脈、うつ病など)
手足に力がはいらない、ろれつが回らない、といった症状を伴う場合は脳の病気の可能性が高く、脳外科のある病院に救急受診する必要があります。

めまい発作を引き起こすきっかけは、疲れ、寝不足、精神的ストレスが多いようです。なるべく睡眠時間を確保するように気をつけてください。

耳からのめまいは時間とともに症状が軽くなりますが、調子が良くなるまでは薬を続けてください。

頸性めまいは症状が良くならない場合は整形外科にも相談してください。

自律神経からのめまいは薬で良くなることが多いですが、疲れからくることも多く安静も必要です。

貧血、高血圧、糖尿病、不整脈は内科へ、うつ病が疑われる場合は精神科に相談してみてください。

<院長コメント>

めまいは内耳性のものが多いです。めまいに不安のある方は耳鼻咽喉科にご相談ください。

良性発作性頭位めまい症

めまいの原因としては比較的多い疾患です。

頭や首を動かすとめまいが起こります。人によっては吐き気も伴います。めまいの持続時間は数十秒程度が多いです。グルグルめまいが多いですが、フワフワめまいもあります。難聴や耳鳴りは伴いません。頭痛や手足のしびれなどの神経症状はありません。中高年、特に女性に多いです。

[原因]

三半気管の中の耳石がはがれ、動くたびごとに耳石が刺激になってめまいが起きます。老化や女性ホルモン、ストレスや寝不足、頭部打撲などで起きます。

[検査]

フレンツェル眼鏡をつけて頭の位置を変え、黒眼の動き(眼振)を確認して診断します。

[治療]

3割ほどは自然に治る人もいます。まずは光刺激でめまいを誘発することもあるので部屋を暗くして安静を保ってください。

治療法は、①薬物療法、②理学療法があります。
①の薬物療法は、急性期では点滴でめまいの注射をしたり、吐き気が強い場合は吐き気止めやめまいによる不安が強い場合は抗不安薬を使用します。吐き気が軽い場合は内服薬で治療を行います。

別の治療としては、②理学療法があります。これははがれた耳石を元に戻す方法で1回の理学療法で約8割の人が治るというデータもあります。自分でできる対策として、わざとめまいを起こして、平衡機能を慣れさせる体操も有効です。

それでも改善しない例、すぐ再発する人は約1割です。そのような場合は手術が行われることもあります。希望があれば専門病院に相談します。

<院長コメント>

良性発作性頭位めまいは内耳性めまいの中でも多いです。動くたびに起きるめまいは良性発作性頭位めまいの可能性が高いです。症状が似ているようなら耳鼻咽喉科に御相談ください。

顔面神経麻痺

ヘルペスウイルス感染、外傷、中耳炎、腫瘍が原因で顔面神経が麻痺する病気です。

単純ヘルペス感染が原因として多く(ベル麻痺)、他に帯状疱疹ヘルペスウイルスが感染すると顔面麻痺だけではなく耳介にも水泡などの皮疹ができ、痛みを伴います(ハント症候群)。

顔面神経麻痺は味覚障害や涙の分泌低下、音の調整も難しくなります。

[検査]

鼓膜のチェック、聴力検査アブミ骨筋反射顔面表情運動の評価、味覚検査、流涙検査、神経興奮性検査(NET)、画像検査などがあります。

[治療]

ステロイド薬(内服もしくは点滴)が主体となります。ステロイドを大量に使用し数週間で漸減します。他にビタミンB12、ATP、抗ウイルス薬を使用します。目の乾燥予防で点眼薬を使用します。高度麻痺で外傷性であれば顔面神経減荷術といった手術も選択肢です。急性期を超えた時期からリハビリも改善に有用です。

ステロイド使用後に半年経過しても麻痺の改善がない場合は回復が困難な場合が多く、形成外科的な顔面の手術も希望に応じて考慮します。

<院長コメント>

ベル麻痺は比較的予後良好ですが、ハント症候群は難治例が多いです。早期にステロイドを使った治療が必要です。