くち・のどの病気

赤文字は当院で行っている検査・治療です。

扁桃炎

口蓋扁桃の炎症で、ウイルスや溶連菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などの細菌が感染して起きます。

症状は発熱、咽頭痛ですが、扁桃炎が悪化し扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍になると開口障害、含み声、嚥下困難、呼吸苦も出現します。

[検査]

視診で扁桃の発赤腫脹や膿栓付着を確認したり、喉頭ファイバースコピーで喉頭浮腫などを確認します。血液検査では炎症反応を確認する場合もあります。

[治療]

ウイルス性であれば解熱鎮痛剤を使用します。細菌性であれば抗生物質内服で治療を行いますが、内服が困難な場合は点滴や坐薬を使います。

扁桃周囲膿瘍の場合は腫脹部位を穿刺して膿を吸引したり(扁桃周囲膿瘍穿刺)、粘膜切開で膿を出したりします(扁桃周囲膿瘍切開術)。

扁桃炎は反復する方が多いです。1年に3-4回繰り返すようであれば扁桃を手術で摘出することを考えた方がよいです。

[その他]

扁桃炎がIgA腎症、掌蹠膿庖症、アレルギー性紫斑病、関節リウマチなどに罹患する扁桃病巣感染症の原因となります。

伝染性単核球症

EBウイルスが原因の病気で、口腔内から唾液感染します。潜伏期間は4日から5-7週間と長いです。

症状は、倦怠感、食欲不振、1-2週間続く38℃以上の発熱、頸部リンパ節腫大、口蓋扁桃に白い膜(偽膜)の付着、咽頭痛、肝腫大、皮疹(ウイルスでも認めますが、ペニシリン使用で皮疹がでます)などがあります。

[検査]

口蓋扁桃の偽膜の有無、血液検査での異型リンパ球の有無、肝機能障害、ウイルスの血液抗体を確認します。

[治療]

保存的治療で、経口摂取困難であれば点滴を行ったり、痛みや発熱に対して解熱鎮痛剤を使用したり、肝庇護薬を使います。抗生物質については、2次細菌感染を認めた場合はマクロライドやテトラサイクリンを使用します(ペニシリンは禁忌です)。治癒には1-2ヶ月かかることが多いです。

安静が必要ですが、特に激しい運動などによる腹部打撲で肝臓や脾臓破裂の可能性もあり十分注意してください。

味覚障害

原因としては、①薬剤性、②亜鉛欠乏、③炎症、④糖尿病、肝・腎障害、胃切除後、シェーグレン症候群などの全身疾患、⑤真珠腫性中耳炎などの中耳炎、などがあります。

風味障害は嗅覚障害からくる場合もあります。

[検査]

耳・鼻のチェック、口腔所見(舌炎、口腔乾燥、舌苔など)、血液検査(亜鉛、貧血の有無、肝・腎機能、血糖など)、味覚検査(電気味覚、滴下味覚)など

[治療]

原因となる薬剤の中止や亜鉛の補充、全身疾患などの原因疾患の治療です。

[予後]

亜鉛治療の有効率は発症6ヵ月以内の症例は70%以上、1年以上経過した症例は50%程度、高齢者ほど治療効果は不良です。

声のかすれ

声のかすれといった音声障害には以下のような病態があります。

①喉頭に器質的疾患がある場合

声帯の炎症で起きる声帯炎、声を酷使する人は声帯結節、声帯ポリープ、喫煙者はポリープ様声帯、声帯白斑症(良性腫瘍)、喉頭癌があります。

②声帯の運動障害

主に声帯運動に関わる反回神経が障害される病気で、甲状腺癌、肺癌、食道癌、解離性大動脈瘤、脳梗塞などがあります。中には気管内挿管や咳などで起きる披裂軟骨脱臼もあります。

③喉頭に所見がない場合

過緊張発声(力んで発声する)や痙攣性発声障害(声のふるえ)などがあります。

[検査]

喉頭ファイバースコピーでの声帯観察やストロボスコピーによる声帯の波動をみます。全身疾患の検索のためCTやMRIなどの画像検査も必要な場合があります。

[治療]

病気に合わせた治療になります。まずは原因を正しく把握することが大事です。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで、胸焼けなどの症状を起こす病気です。食道下部の筋肉が緩むことやストレスなどによる胃酸過多によって起こります。

症状としては、のどの違和感、声が出にくい、咳といった症状が起こる場合があります。

[検査]

上部消化管内視鏡検査や24時間かけたpHモニター検査がありますが、胃酸の逆流を抑える効果の強い胃薬(プロトンポンプ阻害薬)を数週間内服して効果をみる検査もあります。問診から判断する方法もあります。

[治療]

胃薬の内服で胃酸を抑えます。また生活習慣の改善も必要になります。

以下のことに気をつけてください。

①食事は脂肪分が多いもの、酸味の多いもの、香辛料のきついものは避けましょう。

②食べすぎは注意して、腹八分目を心がけてください。

③胃酸の逆流を防ぐために、食後2-3時間は横にならないようにしましょう。

④アルコールは食道下部の筋肉を緩めるため控えめにしてください。

⑤カフェインは胃酸分泌を増加させるので摂りすぎに注意してください。

⑥タバコは逆流性食道炎を悪くすることがあります。

⑦肥満傾向の方は無理ない範囲でダイエットを考えましょう。

長引く咳の原因

咳は風邪を引いた時によくみられる症状ですが、1-2週間以上咳が続く場合は風邪以外の病気を考慮する必要があります。

長引く咳の原因となる病気としては、以下のようなものがあります。

①咳喘息(気管支喘息とは異なりますが、わずかな刺激で敏感に咳が出る状態が続きます)

②アレルギーによる咳

③百日咳(百日咳菌による感染症で、他の人にうつる可能性があります)

④マイコプラズマ(微生物による感染症です)

⑤逆流性食道炎(胃酸の逆流によりのどを刺激します)

⑥鼻炎や副鼻腔炎(鼻水がのどにおりて痰としてからむ)

検査としては、百日咳やマイコプラズマ、アレルギーを血液検査で調べます。またレントゲンも考慮します。

治療としては、咳喘息は一般的な風邪薬や咳止め、抗生物質はほとんど無効で、気管支拡張剤や吸入ステロイド薬が有効です(咳喘息の約30%は気管支喘息に移行します)。アレルギーによる咳には抗アレルギー薬と吸入ステロイド薬、百日咳やマイコプラズマには抗生物質(マクロライド系抗生物質)の1-2週間内服が有効です。逆流性食道炎には胃薬(プロトンポンプ阻害薬)が有効です。鼻炎・副鼻腔炎からくる咳には、鼻の治療を行います。

声帯結節

声帯にできる隆起性病変で、病因は声の酷使で職業として声をよく使う教師、保母、歌手、アナウンサーなどによくみられる。成人では女性に多く、小児では男児に多いです。症状は声のかすれです。

[検査]

喉頭ファイバースコピーで声帯を観察します。また声帯の波動をみるストロボスコピーも有用です。

[治療]

保存的治療としては、声の衛生指導です。

内容としては、①長時間話さない、②大声を避ける、③乾燥を避ける、④力んで話さない、などです。

また、音声治療で発声の仕方を訓練します。それでも改善しない場合は手術で取り除く場合もあります。

◎ポリープ様声帯

声帯粘膜全体が浮腫様になる病気で、慢性炎症(特に喫煙)が原因となります。症状はガラガラ声ですが、浮腫が高度になると呼吸困難を来たすこともあります。

[検査]

喉頭ファイバースコピーで声帯を観察します。また、ストロボスコピーで声帯粘膜の波動を確認します。

[治療]

保存的治療としては、声の衛生指導(声帯結節の項を参照)や消炎などの薬物療法を行いますが、改善がなければ手術を行います。術後は1週間くらい沈黙療法が必要になります。術後経過良好でも喫煙などの原因になるものが除去できないと再発します。

上咽頭炎

上咽頭とは、鼻の突当りの咽頭で鼻から侵入してきたウイルスや細菌が感染を起こしやすい場所です。

症状は鼻の奥の違和感や痛み、後鼻漏ですが、時に耳の響きや頭痛、倦怠感がみられることもあります。

[検査]

口を開けても見えない部位なため耳鼻科で使うファイバースコープで上咽頭の炎症を診断します。

[治療]

消炎剤、粘液溶解剤、抗生物質などの内服治療や鼻処置、吸入も有効です。上咽頭に薬液を直接塗るBスポット療法も効果があります。

咽喉頭異常感症

咽頭・喉頭に異常感を訴えますが、耳鼻咽喉科的視診では訴えに見合うような器質的病変を局所に認めない病気です。

原因としては、①慢性疾患(副鼻腔炎、上咽頭炎、扁桃炎、逆流性食道炎など)、②喉頭アレルギー、③甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病、腫瘍など)、④腫瘤(舌扁桃肥大、下咽頭癌、食道癌など)、⑤形態異常(茎状突起過長症、頸椎異常など)、⑥全身疾患(低色素性貧血、糖尿病、自律神経失調症、など)、⑦精神疾患(神経症、心身症、癌不安など)があります。

[検査]

まず問診で状態を把握します。その後、口腔内の視診、喉頭ファイバースコピーによる咽頭・喉頭のチェックを行います。食道の病気が疑われる場合は上部消化管内視鏡、甲状腺疾患が疑われる時には頸部エコー検査、全身疾患の場合は血液検査やCTによる画像検査が必要になります。

[治療]

原因となる疾患の治療を行います。異常感が強い場合は、抗不安薬や漢方治療を行います。

<院長コメント>

原因疾患を見つけることは困難ですが、患者様の訴えを聞きながら治療方針を立てていきます。悪性腫瘍が潜んでいる可能性があり、しっかり検査しなければいけません。