くびの病気

赤文字は当院で行っている検査・治療です。

頸部リンパ節炎

頸部には約200個のリンパ節があり、体内にウイルスや細菌が侵入することを防ぐ働きをしています。通常は頸部リンパ節は数ミリ程度の大きさです。

のどや歯茎に細菌やウイルスが侵入した時(風邪による咽頭炎、扁桃炎、虫歯、歯肉炎の時)に頸部リンパ節が腫れることはよくあります。また、耳に細菌やウイルスが侵入した時(外耳炎、中耳炎)に耳の周囲のリンパ節が腫れることもあります。

これらの場合は咽頭炎、扁桃炎などの炎症の治療、歯科的治療で頸部リンパ節の腫れも軽快します。

なかには、①ネコに引っかかれて細菌が入る場合(猫引っかき病)、②鳥の糞便から感染する場合(オウム病)、③結核感染、④亜急性壊死性リンパ節炎、などがあります。

亜急性壊死性リンパ節は、痛みを伴う頸部リンパ節の腫れで38℃台の発熱が続きます。頸部の腫れは1~3ヵ月程度続くことがあり、発熱も無治療では1ヵ月程度続くこともあります。血液検査では白血球の減少、LDH、GOT、GPTが上昇する場合もあります。炎症の値であるCRPも上昇することもあります。超音波検査でリンパ節の存在や大きさ、周囲との関係を確認し、場合によってはCTやMRIを撮ります。確定診断はリンパ節に針を刺して細胞を採る検査(穿刺吸引細胞診)や切開をしてリンパ節を摘出(リンパ節生検)し組織検査に提出します。治療は自然寛解もありますが、消炎鎮痛剤などの対症的治療が主体となります。症状が強い場合はステロイドを使う場合もあります。このリンパ節炎は繰り返すことがあります。

バセドウ病

免疫の異常で抗体を作り、TSH受容体を刺激することで甲状腺ホルモンを過剰に分泌する病気です。

ホルモンの過剰が動悸、発汗過多、疲れやすさ、体重減少、食欲亢進などの症状を引き起こします。さらに進むと眼球突出、手の振るえなどの運動障害も起きます。

[検査]

血液検査で甲状腺ホルモンの上昇、TSHの低下、抗TSH抗体陽性を確認します。超音波検査では甲状腺の大きさや血流の状態、腫瘍の有無を確認します。

[治療]

抗甲状腺薬の内服を行いますが、細かな調整が必要で無顆粒症などの副作用もあります。他には放射性ヨード治療や手術もあります。

バセドウ病治療中に感染、ストレスなどが加わると、甲状腺クリーゼといって生命にかかわる病態になることもあります。

慢性甲状腺炎(橋本病)

中高年の女性に多い甲状腺の病気です。成人女性の5-10%に発症すると言われています。

無痛性のびまん性甲状腺肥大や全身倦怠感、寒がり、浮腫などの甲状腺機能低下症状で気付かれることがあります。高脂血症、肝障害、心障害、貧血で見つかることもあります。ヨード過剰摂取が原因で一過性に甲状腺機能低下症となることもあり、海藻の過剰摂取の有無を問診する必要があります。

[検査]

血液検査で甲状腺ホルモン、TSHをチェックし、抗サイログロブリン抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼが陽性であることを調べます。また超音波検査で甲状腺のびまん肥大と甲状腺腫瘍がないことを確認します。

[治療]

甲状腺ホルモン内服補充を行います。血液検査を定期的に行いながらホルモン値が安定するのを確認します。

甲状腺腫瘍

前頸部腫瘤、声のかすれ、のどの違和感、検診で指摘されて受診することが多いです。

腫瘍には良性腫瘍、悪性腫瘍があります。良性腫瘍は濾胞腺腫や多発性の腺腫様甲状腺腫が多く、悪性腫瘍では乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌があります。悪性腫瘍の場合は声を出す神経に浸潤し声帯が動かなくなったり、気管・食道に浸潤することもあります。またリンパ節転移や遠隔転移を起こすこともあります。

[検査]

超音波検査で腫瘍の状態を確認し、頸部に針を刺して細胞を採取する検査(穿刺吸引細胞診)を行い診断をつけます。また血液検査で甲状腺ホルモンをチェックし腫瘍マーカーで使われるサイログロブリンを測定します。

[治療]

手術が主体です。良性腫瘍であれば定期的なサイズチェックで経過をみることが多いですが、急激に大きくなったり、もともとのサイズが大きく周囲臓器を圧迫する場合は良性腫瘍でも手術を行います。悪性腫瘍は手術が必要ですが、乳頭癌はゆっくり大きくなる癌で1cm未満で周囲臓器浸潤や明らかなリンパ節転移がない場合はしばらく経過をみることがあります。

正中頚のう胞

甲状舌管の遺残から発生するのう胞です。男性に多く、10歳前後での発症が多いです。

症状は前頚部の弾力ある腫瘤で、感染を起こすと急激に大きくなったり痛みを伴います。

[検査]

視診、触診である程度予測できますが、CT、MRI、超音波検査で確認が必要です。内容物を針を刺して確認して検査に出す(穿刺吸引細胞診検査)こともあります。

[治療]

根本的治療は手術による摘出です。場合によっては穿刺吸引でのう胞を小さくして経過をみる場合もあります。

側頚のう胞

胎児期に頚部がつくられる時にできるのう胞で、好発年齢は20-40歳代です。部位は胸鎖乳突筋上方1/3の位置に多いです。

症状は柔らかい腫瘤です。

[検査]

CT、MRI、超音波検査でのう胞の位置や周囲組織との位置関係を確認します。場合によっては針を刺して内容物を検査に出す(穿刺吸引細胞診)も行います。

[治療]

根本的治療は手術による摘出です。手術拒否例ではOK-432という薬剤をのう胞内に注入しのう胞壁を癒着させる方法もあります。